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「…佳純には知られたくなかったの」
「うん。ごめんね」
「ううん…黙ってた私も悪いよね。親友なのにね」
その言葉に胸がチクリと痛んだ
私は鳥谷さんの事を菜穂に黙ってる
でも菜穂はそんな私と真摯に向き合おうとしてくれている
親友と名乗る権利が私にはあるだろうかーー
「あの人にどう聞いたかは知らないけど、ありのままに話すね」
初めて鳥谷先輩に会ったのは部活動紹介の時だった。カッコいい人だなとは思ったけど、それ以上の感情は何もなかった
先輩はしつこく私に絡んだり遊びに誘ったりしてきて、最初は鬱陶しかったんだけど…段々と接していくうちにいないと寂しいと思う自分がいた
そんなある日、先輩と同じクラスのバスケ部の人から嫌がらせを受けたの
多分、先輩の事が好きだったんだと思う
その嫌がらせがエスカレートし始めて…私はバスケ部の女子ほぼ全員からいじめられるようになってた…
精神的に限界がきた私は、バスケ部を辞めた
ーーここまでは、私が聞いた話と同じだ…
やっぱり先輩は嘘をついてなかったんだ…
「そんなある日…」
菜穂は続けた
先輩に本を借りてたことを思い出して、冷たい態度をとった事も悪いと思ったから…本を返すついでにせめて一言謝りに行こうとしたの
3年の教室には行きたくなかったけど、勇気を振り絞って行くことにした
その時に…聞いちゃったの
ーー「翔介、お前最近1年の子と仲良かったけどどうなったの?」
「あの子バスケ部辞めたよ!いなくなってせいせいする。翔介に色目ばっかり使ってたしさ」
「翔介もほんとは迷惑してたんじゃないの?よく遊びにも誘って来てたでしょ?」
何を言ってるんだと思った…
私から遊びに誘ったことは一度もないのに…
私は、先輩がきっと否定してくれると…そう信じていた
「お前らなぁ…」
でも、先輩から出た言葉は予想と反するものだった
「俺が1年なんか本気で相手すると思うか?仕方なくに決まってんだろ?」
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