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「菜穂はもう鳥谷さんのこと嫌いなの?」
「嫌いというより、怖い。人間として信じられない」
「例えば…もし、もしの話だけど…もう一度彼と向き合うつもりとかはないの?」
「…無いかな。私はもう、あの頃を思い出すのも嫌なの」
…相当辛かったんだな…
私はそんな菜穂を見たことが無かったからわからなかった
菜穂は強くて、優しくて、正義感に溢れてて…
そんな私のイメージとは真逆な中学生活を送ってたんだ…
だけど、だからこそ
前へ進むためにも…鳥谷さんと話すべきなんじゃ…
「もしかしたらさ…鳥谷さんも、悔やんでるかも知れないよ?」
10年もストーカーしてしまうくらい…
「あり得ないよ。あの人が何を悔やむの?」
「…菜穂を、裏切ったことを」
「ーーそうだね。もしそれを悔やんで償いたいと思ってくれてるなら…二度と私の前に現れないで欲しい。それが一番の償い方だよ」
冷たく鈍く光る菜穂の目に恐怖を感じながら私は
それと同じくらいの憐憫を鳥谷さんに抱いてしまっていた
「…佳純があの人に会うのは自由だけど…私は忠告したからね。後は佳純次第だよ」
「…うん…」
わかってる…
でも…
6年もの想いは、簡単には捨てられないよ…
「ごめん、今日は顔洗って寝ていい?少し眠くなってきちゃった」
菜穂はそう言って鞄からポーチを取り出した
「あ、そだね。明日も仕事だもんね」
「うん。明日も頑張ろうね…」
顔を洗い、小事を済ませた後
微かなわだかまりのようなものを残して
私達は寝床についた
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