4/9
215人が本棚に入れています
本棚に追加
/549ページ
「まあなんにせよ犯人は捕まったわけだし、これでまだ何か被害があるようならストーカーの存在もハッキリするね」 警察署の前で、菜穂はそう言った 「…そだね。でも、あの人がストーカーだったらいいよね…そしたら全部丸く収まるのに」 これは心の底からの私の願望だ 「だねぇ。もう悩むの嫌だしね」 菜穂には早く元気になって欲しい。それは本当… ただ私には、それとは別に大切にしたいものがある 菜穂を傷つけずに菜穂のことをストーキング出来るのは 恐らく世界で私一人だ… だから、私がやるしかないんだーー バレないように…慎重に… 大きな矛盾の中で漂いながら 私は暗い気持ちを必死に押し殺して言った 「悩んだときは、私が力になるよ」 目を丸くして、菜穂は返した 「…佳純…本当ありがとうね。これからもお世話になります」 この律儀さも、菜穂の魅力の一つだ 親しくても決してなあなあにしない所が、私は大好きだ 「今日はやっぱり私の家で食べよっか。もう遅いし」 「ならピザにしない?ちょっと食べたくなっちゃった」 「そだね。ビールも買っちゃおー」 そうして私達はビールを数本買った後、真っ直ぐ菜穂の家に向かった 菜穂は少し恐る恐る家の鍵を開けた やっぱりまだどこかで恐怖心があるんだな…当たり前か、昨日の今日だもんね… 「どうぞ」 「お邪魔します」 「散らかってるけど、ごめん」 散らかってる? 見渡す限りきちんと整理整頓されたこの部屋が散らかってるなら私の部屋はゴミ屋敷だよ… 心の中でそう呟きながら私は椅子に座った それにしても…菜穂の部屋は女の子っぽさがないというか、非常にシンプルだ 家具もほとんど白と黒で、余計なものが置かれていない 私は小物や雑貨が好きなせいで部屋の中がチカチカしてしまうんだけど ただ…… 菜穂の過去を知ってしまった今、そういうものから離れようとしているのかな。とも邪推してしまう そんな自分が少し嫌だ あ…そうだ。写真!
/549ページ

最初のコメントを投稿しよう!