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菜穂は…まだ来ないかな… 今のうちに撮っちゃおうかな… 菜穂は奥の部屋で服を着替えている 菜穂の家の間取りは2DKで、家に入ってすぐに洋間があり、奥にダイニングキッチンと8畳程の部屋がある 大体は入ってすぐの洋間が客間になっており、私はいつもここで菜穂と話をする 一人暮らしにしては広すぎると思うが、菜穂は前に狭い家が嫌いと言っていた たしか…狭い家に住むと圧迫感があるから怖いと。所謂閉所恐怖症というものらしい そんな事を考えていると菜穂が声を掛けてきた 「佳純ー、何飲むー?」 私はその質問に対し出来るだけ時間のかかりそうなものを頼むことにした 「えっと…エスプレッソがいいな!」 「えー!バリスタでするからちょっと時間かかるよー!」 「大丈夫だよー!」 逆に好都合です… 「わかったー!」 よし、これで時間が出来た! とりあえず…あまり目立たない場所を撮ることにしよう。プライベートだもんね! 私は天井や床やタンスなどを撮り、菜穂の私物が見える辺りはあえて避けた まあタンスも私物だけど…生活感が見えすぎないからいいよね… 一通り撮り終えると、私の中で微かな欲が芽生えた ……廊下だけは撮っておこうかな 足音を立てないようにそーっと廊下に立ち、廊下から玄関が映るようにカメラを構えた その瞬間だった 「何してんの??」 「えっ!?」 菜穂が真後ろに立っていた 私は口から心臓が飛び出しそうになりながらも、平静を装って答えた 「あれ…トイレってどっちの扉だった??」 「トイレはこっちだけど、何で玄関見てんのよ」 菜穂は笑いながらそう言った 私は頭をフル回転させる 「…えっと……こないだあんな事件があったから、玄関に何かしら防犯の細工出来ないかなって考えてたんだよね」 「…あー、成る程…確かにね…今度から網戸も閉めていくことにしようかな」 「それがいいと思う。ブザーを取り付けるとかね」 「ちょっと考えてみる。ありがとう…そんな事まで」 「ううん、とりあえずトイレ借りるね。我慢限界かも」 「はーい、もう出来るからね」 トイレに入った私は安堵のため息をついた
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