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そうして私は菜穂の家から急いで駅まで行き、電車を待つ
待っている間罪悪感が一気に襲ってきたけど
…菜穂、応援してくれるって言ったもんね…許してくれるよね…
最低な自分を更に最低にするような、都合のいい解釈で罪悪感を拭おうとした
私は一度も振り返らずに、到着した電車に乗った
心の歪みは確かに感じていた……
ーー車内では多くの人が笑ったりうなだれたりしている
この人達も、人に言えないような秘密を抱えているんだろうか
こんなに狡くて卑怯な人間は…世界で私だけなんじゃないだろうか…
私はあの犯人を同じ穴のムジナと思ったけど…
ひょっとしたら…親友を平気で騙し、親友を裏切った…いや、今も親友を裏切り続けている人を愛してしまっている私の方が
ずっと極悪人なのかも知れない
ーー電車は揺れる
窓に映る顔は、また確かに笑っている
自分の歪みを鮮明に映し出すようにーーー
私は…きっとこの闇を抜け出せない
そんな不安に包まれる
大丈夫…私は、菜穂が大好きだもん…
親友だから…たった一人の…ただ一人の…
最後の最後には、菜穂を笑顔にしてみせる
息を呑みながら、流れる景色の中に不安を溶かしてゆく
ーーー電車は揺れる
邪悪に塗れた…薄汚い狢を乗せてーー
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