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「…自分語りしていい?」
「…聞きたいです」
「ありがとう」
「ーーー僕は学生の時は大抵なんでも出来た
自分は完璧なんだと、そう勘違いすることもあるほどに…
多くの人が自分の周りに集まり、ヒエラルキーで言えば間違いなく最上層に立つ人間だと自覚していた
だけどその裏側で
完璧とは程遠い自分がいることを感じていた
ちやほやされ、持て囃される度に、まともでいたくないと思う自分がいることに気が付き始めていた」
「完璧でいるということは、恐ろしくつまらないことだと気付いたんだ」
「でも完璧でない自分になんて価値はないと思っていた僕は…まともなフリを、完璧なフリをし続けるしかなかった
そのうちに
喜怒哀楽というものすら、自分の中から失われていった
無趣味で無個性で…でも成績だけは常にトップで、スポーツも右に出るものはいない
でも感情は少しも動かない…
ロボットみたいなもんだった」
「だから…初めて風見を見た時
衝撃を受けた」
「彼女は、自分の感情をストレートに伝えることが出来る
自分と真逆の存在
イエスとノーが明確に出せる人間
凍っていた自分の感情が…動き出したのを感じた」
私はその言葉に深く共感出来た
何故なら、私もまた彼と同じように菜穂のその性格に憧憬の念を抱いていたから…
「…わかる気がします。菜穂の魅力は、可愛さよりもそっちにある気がします」
「そうだね…だから僕はずっと風見の心に触れたくて、近付き続けたんだ。そのせいで、風見のその最大の魅力を失わせることを知らずにね」
「それは…鳥谷さんは悪くない!」
想うだけで罪になるなんて…そんなことあるわけがない
「だけど現に、僕は彼女を裏切った。自分のしょうもない自尊心と…完璧という虚像を保つ為にね」
「贖う事が出来るとはもう思ってはいないよ。あまりに時間が経ち過ぎたからね」
悲しく笑う彼に、私は心を締め付けられた
「続きは店で話そうか」
彼が店を指差しそう言った
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