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付き合っても何も…断られたのは私の方なんだけど…
ていうか…本当に…!?
いや、そんなうまい話がある訳がない
だってこの人が好きなのは菜穂なんだから
私は絶対に理由があると思い、彼が口を開くのを待った
「君に、僕のこの歪みを…壊れきったブレーキを…直して欲しいんだ」
彼は恐らく、真剣だということを瞳が物語っていた
「そんなの…どうやって…?」
「わからない。けど…僕を想って、理解してくれる君といれば僕は変われるかもしれない」
「変わるなら…今しかないと思ってる…そしてそれは…君がいなきゃ成し得ないことなんだ」
その言葉が真実か嘘かも、声色や顔色からはわからない
「私は何をしたらいいんですか…」
「ただ…想っていてほしい。僕を」
「それだけですか?」
「…出来たら…風見の事も教えて欲しいかな」
ほら…やっぱりこの人は私を利用しようとしているだけなんだーー
そんな私を見て、彼は続けた
「利用してるわけじゃない…自分でもわからないんだけど…僕は人生において初めて、揺れ動く何かがあるんだ」
「それがどんな感情かは僕にはわからない。だから君とそれを見つけたい…ただはっきり断言出来るのは、僕の心はまだ風見に埋め尽くされている…今は、今はだけどね」
今は…
いつかは、変わることがあるの?
ほんの僅かでも、望みがあるの?
なら私は…
「私ーー協力します。鳥谷さんに」
自ら、薄氷を踏む
わかってる
この道の先に、ハッピーエンドはないって事は
だけど私はそれでも
「ありがとう。よろしく…花井さん…あっ…いや、違うかな。……ーーー佳純…」
照れ臭そうに彼が言う
「よろしくお願いします…ーーー翔介さん」
ただこの醜く歪んだ恋の
ハッピーエンドをーー信じたい
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