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ーーー 世間が賑わいを見せる日曜の昼下がり 退屈を帯びた私は一人、めかしこんで街へと繰り出していた 本当は佳純を誘いたかったんだけど、佳純は何か用事があるみたいなので仕方なく一人でブラブラとウィンドウショッピングを楽しむことにした 中学時代の事もあり、私は人と行動するのが凄く苦手だ そんな私がずっと一緒にいて安らげる佳純は、やっぱり私にとって特別な存在なんだろう 「あれ?風見じゃん。何してんの、一人?」 「…あっ!」 前から歩いてきたのは、同じ会社の営業部の乃木下さんだった 私より10程年上な乃木下さんは、大人びていて落ち着いている 柔和な物腰と優しい言葉遣いで、社内でも皆から好かれている さすがは営業部でトップなだけある 「こんにちは。見ての通りですよ…」 「風見って人と一緒に買い物するのとか苦手そうだもんな」 よくご存知で… 「買い物は一人が一番楽ですよ。気兼ねしませんし。それより乃木下さんこそ一人ですか?」 「まあな。来週天城山登りに行くからその準備をね」 「おー天城山ですか。いいですねぇ」 「お!一緒に行くか?!」 「いえ、遠慮しておきます」 チェッ、と顔に表して大らかに笑う乃木下さん 「まあ気が向いたら行こうぜ。お互い仕事も頑張ろうな!んじゃまた!」 そう言いながら爽やかに去っていった 「ふぅっ…」 思わず安堵のため息が漏れる 会ったのが、乃木下さんでよかった というのも、私は以前乃木下さんの友人に告白され断っている 断って以来一度も話していないけど多分向こうもそのうち普通に接してくれるだろう… 同じ職場の人間に告白とか…正直やめたほうがいいと思うけど…面倒だし… 私はショーウィンドウ越しに映る自分の姿を見てまた深い溜息を吐く 考えたらなんだか気分が滅入ってきたので、気分転換にお茶でもしようといきつけのカフェに行くことにした 「あれ…?」 見たことのあるシルエットの人物が服を見ているのがミラー越しに見えた あれは…もしかして… 私は驚いて店の中へ入った 私に気がついたその人は、持っていた服を置いて気さくに話しかけてくれた 「あら!菜穂ちゃん!?久しぶりね!」 小柄で可愛らしいその人は 「お久しぶりです!高校の時以来ですね!」 佳純のお母さんだった
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