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「でもあまり無理はしないでね。佳純と風見が仲悪くなったら嫌だしさ…」 その言葉に少し嫌な事を考えてしまったけど、頭の中で払拭した 「うん…気をつける。菜穂に嫌われたくはないしね…」 だけど私は…親友に卑劣な嘘をついてしまっている これからも…そんな嘘を重ね続けるのかな… 「そうだ。来週、僕の家に来ない?」 「えっ!?」 唐突な誘いに、変な声が出てしまった 「ダメかな?」 「行きます…あ、行く!」 「じゃあ日曜日にしようか?」 「うんっ!」 …私はそれでも…今はただ…この泥濘の中を歩いていたい… ーーー 翔介さんと近くの居酒屋で食事を楽しんだ私は翔介さんと別れた後、その帰り道で菜穂に連絡を入れてみた 「今日大丈夫だった??明日は来れそうかな?無理はしないでね」 味気ない文だけど変に長文にして気を遣わせるのも嫌だしこれでいいよね… しかし送信して暫く待っても返事は無かった …まだ寝込んでるのかな こんな事初めてだな… 私は不安になり、携帯を強く握りしめる もうじき夏が訪れるのに、叩きつける夜風は冷たかった 不安を更に煽るように、見上げると星一つ無い宵闇が広がっていた 「…菜穂…ごめん…」 私は罪悪感に塗れながら 彼の声ーー呼吸ーー瞳ーー指先をリマインドしている 一つの体に二つの意思が存在するかのように まるで…二重人格者だ… ちぎれそうな二つの意思を 繋ぎ止めなきゃと思いながらもーー 私はまた… 「おやすみ!大好き」 ひたすらに、彼への想いを募らせるーー
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