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行きつけのカフェに行き、私達は同じランチを頼む いつものようにいつもの場所で向かい合っているのに…少し菜穂が遠く感じる 「…菜穂、何かあったの…?」 意を決して、私は訊くことにした 菜穂はなにかを考えているのか、押し黙っている そして一口水を含み、私の顔を見て口を開いた 「…高校の時さ」 「……へ?」 「佳純と初めて話した日の事、覚えてる?」 「…どしたの、いきなり」 「覚えてる?」 有無を言わさぬ強い口調で、菜穂は尋ねてきた 「…うん…覚えてるよ」 「…私ね、あの時から…佳純に憧れてたんだ。佳純は、私には決して無いものを持ってたから」 「…そんなものあるかな…」 「……何かわからない?」 「…わからないよ」 「……ーー自分だよ」 「…自分…??」 「あの日からずっと…佳純は誰にも流されず、ブレず、自分を偽ることが無かったよね」 「…そう…かな」 私は言葉が詰まって出てこなかった 真っ直ぐ私を見つめる菜穂の顔が見られない 私はあの時の私とは…もう別人だから… 「どうして急にそんなことを…」 菜穂はまだ私を真っ直ぐ見つめている 「佳純…私日曜日に、おばさんに会ったよ」 …!!? ……菜穂を遠く感じたその理由に……やっと気が付いた そして続けざまに、菜穂が言い放つ 「ねえ佳純…どうして嘘ついたの?」 時が、凍りついた気がしたーーー
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