14/14

215人が本棚に入れています
本棚に追加
/549ページ
「それは…」 言い訳を許さない菜穂の視線が突き刺さる 何を言おうと、誤魔化せる気がしない… 背中から嫌な汗が滲み出てくる 私は… 親友にこれ以上…嘘をつくわけにはいかない… 「ごめん…菜穂…ーー私…実は… 鳥谷さんと付き合ってるんだ…」 その言葉に、菜穂の顔が強張った 「…そう…なんだ」 「…黙っててごめん…でも…例え菜穂を裏切った人だったとしても…好きなの」 これだけは、嘘偽り無い事実だ 「…そういうことね…。だから嘘ついたんだ」 「…ごめん…菜穂には言えなかったから…」 「…それはいいのよ、好きになるのは佳純の自由だし、付き合うのも二人の自由だしね」 「菜穂…」 「でもね」 菜穂は潤んだ瞳で言葉を繋いだ 「…一緒にいた私よりも…彼を優先されたのは……やっぱり悲しいよ…佳純…」 「それが一番…辛かった…」 震える手でグラスを掴み、細々とそう告げた菜穂に…私も涙が止まらなかった 「ごめん…ごめんね!菜穂!私が悪いの…全部私が…」 「私といるより……彼といる方が楽しいの??」 涙を零しながら尋ねる菜穂に私は何も言えなかった 「違うの…菜穂…ただ…私、初めての恋だから…舞い上がっちゃってて…」 私はグラスごと菜穂の手を握りしめた 「こういうことは絶対にもうしないから…許して…」 「わかった…ごめんね。佳純の恋の邪魔するつもりなんかじゃないのに…」 「菜穂の事は本当に一番の親友だと思ってるよ。それだけは信じて…」 「……うん。信じるよーーこんな場所で取り乱してごめんね…」 「私のこと嫌いにならないでくれる…?」 私は恐る恐る菜穂に尋ねた 「ううん!なるわけないじゃない!ただ、もう隠し事はやめてね?」 「うん、もうしない!」 そうして私達はいつものようにとまではいかないけど、仲良く食事をした だけど… 私達の関係に気付かない内に入ってしまったこのヒビが、より大きな亀裂になる事を…この時の私は知る由もなかったーーー
/549ページ

最初のコメントを投稿しよう!

215人が本棚に入れています
本棚に追加