愛憎

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愛憎

その日の私は朝から上機嫌で、ドレッサーの前で鼻歌なんか歌っちゃったりしていた この日をどれだけ心待ちにしていただろう アイロンで髪を巻いていると、携帯が震えた 「おはよう。起きてるかな?」 私はアイロンそっちのけで急いで返事をした 「おはよう!起きてるよー」 「じゃあ9時にテグロフで待っててね」 「了解です」 今日はなんといっても、初めて彼の家に行ける日だ 緊張と興奮が抑えきれない私は胸に手を当て深呼吸をした 菜穂とも仲直り出来たし、彼の事を伝えることも出来たし逆にバレて良かったなと思う これで堂々と彼に会うことが出来るしね… 後は翔介さんの心を少しでも私に向けるよう努力しなきゃ もう菜穂のストーカーなんてしなくていいようになれば 全部が丸く収まるんだよねーーー 鏡に映る自分を見つめ、気合いを入れる 「よし!」 ーーーー なるべく時間に余裕を持って出たはずなのに、何故かギリギリになってしまった私は息を切らしながら駅からテグロフまでの道を走る 店の前には既に彼が立っていた 「ごめん!待たせちゃった!」 「いや、今来たとこだよ」 多分嘘なんだろうけど…優しいな… 「本当は車で家まで迎えに行こうと思ったんだけど、今日車弟に貸しててさ…ごめん」 「全然気にしないで!大丈夫!」 それにしても… カッコいいなぁ… 綺麗な首筋… 「じゃ、行こっか」 翔介さんの首筋に見惚れていた私は反応が遅れてしまった 「あ、はい!」 彼はヒールを履いた私に歩幅を合わせながらゆっくり歩いてくれる 翔介さん…やっぱり結構色んな人と付き合ってきたのかな 経験豊富なのかな… 「翔介さんって、よく女の子を部屋に誘ったりしたの?」 少し厭らしい言い方になってしまったな… そんな私に彼は笑って返した 「そう思う?」 私は力強く頷く 「ハハハハッ!そうなんだ。そう思われてたとは」 彼は珍しくすごく笑っていた そしてこう答えた 「見ればわかるよ」
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