愛憎

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「ご馳走様でした!」 「どういたしまして」 「食器洗うね」 「置いといてくれていいのに」 「こんな美味しいもの食べて何もしないなんてバチが当たるよ…」 「佳純は褒めるの上手いなぁ」 本心なのに… 「じゃあDVDの準備しておくね」 「はあい」 私は洗い物をしながら、いつ本題を切り出そうか考えていた そして洗い物をしてるうちに 少し怖くなっていった もし…菜穂と翔介さんが会って…また仲良くなったら 私はどうなるんだろ… 菜穂はきっと私を裏切らない。それは自信を持って言える けど、翔介さんは……? 元々菜穂の事が好きなのに、もし菜穂が彼を許したら… もっと菜穂の事好きになっちゃうんじゃ… そんな思考が頭を巡り、私は手が止まっていた 「佳純、どしたの?」 「あ!ごめん!ちょっと仕事の事考えてて…」 翔介さんが心配そうに私を見ていた 「ああー…仕事大変なんだね…でもあんまり肩の力入れすぎずにやるのも大事だと思うな」 「そうだよね。ありがとう…」 「ごめん、何も知らないのに勝手な事言って」 「ううん、ちょっと考えてただけだからさ」 私は洗い物を終え、ソファーへちょこんと座った 「とりあえず今は忘れて映画を楽しもう」 「…うんっ!」 はぁ…幸せ 彼を失うなんて、もう考えられないよ… この時間は私にとって、私の人生で一番の宝物だよ… これで両想いだったら、もっと幸せだったんだろうなーー 映画は派手なアクションシーンのある漫画原作の戦国物だった ダイナミックな映像と壮大な音響、相当しっかり作り込まれている でも私は心から映画を楽しむことができなかった 隣で真剣な眼差しで映画を見る彼に釘付けになりながら この淡い恋の行方を一人煩慮していたからだ 「ねえ、翔介さん」 「ん?どしたの?」 翔介さんは映画を見たまま答える 多分いいところなんだろう 私はそんなことも構わずに、いきなり質問した 「菜穂が今度、翔介さんに会うって」 「…え?」 ーーー彼はリモコンの一時停止ボタンを押し、驚愕した様子でこちらを向いた
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