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驚いた様子で、翔介さんが尋ねる
「…え?…許してくれるのか?僕を…」
「…あれから何年経ったと思ってるんですか?私も鳥谷さんももう大人ですよ。いつまでもそんな事で悩むわけにいかないじゃないですか」
…それが菜穂の強がりだと、私はすぐに気付いた
菜穂はずっと悩んでいた…孤独な生き方を選んでしまう程に、過去に縛られていたはずなのに…
「風見…あ、あの!償いってわけじゃないけど…これから少しずつ、風見の力になれないか?もちろん佳純の彼氏として、佳純の友人としての風見に!」
真っ直ぐに、煌めいた瞳で翔介さんは言った
「…有り難いですけど、その気持ちは全部佳純に向けてあげてください」
「佳純の事はなにがあっても大事にするのが当然だと思ってる…だけど、風見に対してもきちんとケジメをつけたいんだ…弱かったあの頃の自分と…決別する為にも」
その言葉を聞いて、菜穂は驚き
不意に微笑んだ
「……その気持ち、ちょっとわかります」
「!!」
そうか…菜穂と翔介さんは…同じ苦しみを背負っていたんだ……
立場が違うだけで、根っこは同じ
過去の弱い自分を変えたいというその願いが
二人の人生を捻じ曲げ続けていたんだーー
優しく見つめ合う二人を見て私はなんだか妬けてきた
こんなにもお互いの存在が、心の底に根強く残ってたということに今気付かされたから…
例えそれが互いに負の感情を芽生えさせ、誤った道に導いたとしても…
人生を変えるほどの存在だという事には変わりがないんだから…
「…じゃあ、今度から私とは彼女の親友という事で…普通に仲良くしましょう」
「風見…もちろん!これからも色々、よろしく!」
そっか…
菜穂は今日弱かった自分とさよならする為に、翔介さんの顔を見てそう言いたかったんだ…
良かった……菜穂…
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