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私は暫く、ぎこちなく続けられる二人のやりとりを見守っていた
「そういやこないだ、カネセンに会ったよ。元気そうだった」
「え!カネセンって金田先生?元気なんだ…もう50近いよねあの先生」
「そうだね。でもまだまだ衰えずって感じだったよ。今でもバスケ部の顧問やってるみたい」
「そうなんだ…部活の時は怖かったけど、いい先生だったよね…」
「僕なんか試合中に呼び出されて雑誌で頭殴られた事あるよ…意識飛ぶかと思った」
「私それ見てたよ。鳥谷さん暫くの間コート内でフラフラしてて皆心配してたよ」
「本当に?すごい恥ずかしいな…」
なんだか私の知らない話で盛り上がり始めた
まあ同じ過去を共有してるから仕方ないか
にしても…なんだか打ち解けるの早いな…
もう敬語じゃ無くなってるし
まあ…昔仲良かったんだから仕方ない事なのかも…
ちょっと、寂しいけど
そんなことを思っていると、急にお母さんから電話がかかってきた
「あ、電話だ。ちょっと話してくるね?」
「あ、うん!」
「わかった」
私は二人が気になりながらも外に出て通話する
「…どしたの?」
「もしもし、佳純!?お父さんが仕事中に怪我しちゃって病院に運ばれたらしいの!今から病院に行けない!?」
「ええ!?今から…?お母さんは?」
「すぐに行きたいんだけど、今お母さんも高熱で動けないのよ…」
「ええー…困るよ…そんなに大変な怪我なの?お父さん」
「高い所から落ちちゃったみたいで…今のところ命に別状は無いって聞いたけど…」
どうしよう…
なんて言ってられないよね…
お父さんに何かあってからじゃ遅いんだし…
「わかった。今から向かうよ」
「お願いね…色々話聞いてまた電話ちょうだい」
「うん。お母さんも気を付けてね」
そう言って私は電話をきった
それにしてもこれは因果応報というやつだろうか
この間お母さんが体調悪いなんて嘘をついたから…こんな事になったのかもーー
後悔の念を引き摺りながらも私は二人の元へと戻り事情を話した
「…ええっ!おじさんが!?」
「だ…大丈夫なの?」
「わからない…二人には申し訳ないんだけど今から病院に行ってくるね…」
「私も一緒に行こうか?」
「僕も付き添おうか?」
「えっ!?いやいいよ!大丈夫!ありがとう」
菜穂はともかく、流石に翔介さんとお父さんを会わせるのは色々と複雑な感情がある
…色々と
「ごめんね。ここの料金置いとくね」
「何言ってるんだ。このお金でお父さんに何か買って行くべきだよ」
翔介さんは私が出したお金を突っ撥ねてそう言った
「連絡してね…待ってるから」
「僕も待ってる。落ち着いたらでいいからね」
「…ありがとう。また連絡するね!二人共!」
そう告げて私はテグロフを飛び出した
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