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「もしもし、佳純?大丈夫だった?」
「うん…ごめんね今日は…実は…」
私は菜穂には、お父さんの容態を包み隠さず伝えた
菜穂は静かに話を訊いてくれた後、少し悩んで口を開いた
「そうなんだ……あのさ、明日私も病院一緒に行っちゃダメ…?おじさんには色々お世話になったし、少しでも顔を見ておきたいんだ…」
うーん…
お父さん人に見られるの嫌かな…
まあでも昔から仲良い菜穂ならいいよね
「じゃあお願いしようかな。明日ついてきてくれる?」
「うん!明日仕事来れそうなの?」
「うん、それは大丈夫だよ。ただ暫く定時で帰るけど」
「…良かった」
「…うん。じゃあ切るね?」
「あ、あのさ…今日はありがとうね」
唐突に菜穂が言う
きっとそれは翔介さんとの事を指してるんだと思った
「佳純のお陰で私も漸く前に進める気がする」
「力になれたなら嬉しい…」
「うん!私も佳純の力になりたいから、なんでも言ってね?」
「ありがとう…また何かあったらお願いするね」
それじゃあ。と電話を切った
…そして…ふと、気が付く
ーー胸の中にあるこの想いは
一体何なのだろう
わかってる…
多分私は怖いんだ
菜穂の中にあった闇が消えたということが…
前へ進めるようになった菜穂は、きっと輝いて見えるだろうから…
きっと彼の目にも、魅力的に映るだろうから…
彼を、奪われるという恐怖
そんな事はないと頭では言い聞かせながらも…
逸る気持ちが抑えられないーー
ダメだ…浮かれてる場合じゃないってさっき思ったばっかりなのに…今はとりあえず忘れよう……
ーーしかし
やがて私は思い知ることになる
この一抹の不安と恐怖は
私の中にある深い憎しみの渦に続いていることをーー
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