愛憎

16/16

215人が本棚に入れています
本棚に追加
/549ページ
「もしもし、佳純?大丈夫だった?」 「うん…ごめんね今日は…実は…」 私は菜穂には、お父さんの容態を包み隠さず伝えた 菜穂は静かに話を訊いてくれた後、少し悩んで口を開いた 「そうなんだ……あのさ、明日私も病院一緒に行っちゃダメ…?おじさんには色々お世話になったし、少しでも顔を見ておきたいんだ…」 うーん… お父さん人に見られるの嫌かな… まあでも昔から仲良い菜穂ならいいよね 「じゃあお願いしようかな。明日ついてきてくれる?」 「うん!明日仕事来れそうなの?」 「うん、それは大丈夫だよ。ただ暫く定時で帰るけど」 「…良かった」 「…うん。じゃあ切るね?」 「あ、あのさ…今日はありがとうね」 唐突に菜穂が言う きっとそれは翔介さんとの事を指してるんだと思った 「佳純のお陰で私も漸く前に進める気がする」 「力になれたなら嬉しい…」 「うん!私も佳純の力になりたいから、なんでも言ってね?」 「ありがとう…また何かあったらお願いするね」 それじゃあ。と電話を切った …そして…ふと、気が付く ーー胸の中にあるこの想いは 一体何なのだろう わかってる… 多分私は怖いんだ 菜穂の中にあった闇が消えたということが… 前へ進めるようになった菜穂は、きっと輝いて見えるだろうから… きっと彼の目にも、魅力的に映るだろうから… 彼を、奪われるという恐怖 そんな事はないと頭では言い聞かせながらも… 逸る気持ちが抑えられないーー ダメだ…浮かれてる場合じゃないってさっき思ったばっかりなのに…今はとりあえず忘れよう…… ーーしかし やがて私は思い知ることになる この一抹の不安と恐怖は 私の中にある深い憎しみの渦に続いていることをーー
/549ページ

最初のコメントを投稿しよう!

215人が本棚に入れています
本棚に追加