起点

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ーーーー 「お久しぶりです。おじさん」 「お!菜穂ちゃんか…久しぶりだな」 「来ていいものか悩んだんですけど、来ちゃいました」 「まあ人にあまり見られるのは恥ずかしいが、菜穂ちゃんなら歓迎だよ」 「おはよう菜穂ちゃん。ありがとうね」 「おばさん、こないだは突然帰ってすみませんでした」 「いいのよ別に!またご飯でも行きましょ」 お父さんの服を畳みながら、お母さんが菜穂にそう言った やっぱりお母さん…元気なさそうだな… まあ…当たり前か… 「おじさん、もしおばさんも佳純も手が空いてない時は私に連絡くれたらすぐ飛んで来ますんで!」 「はは、頼もしいな。その時はお願いするよ!」 「お母さん、しんどくなったら私が色々するから言ってね」 「…佳純。そんなに気を遣わないでいいわよ!もうお父さんの世話を焼くのは慣れてるからね」 「そうそう。母さんに任せときゃいいんだ。お前は自分の事だけ考えてなさい」 そうは言われても…やっぱり少しは力になりたいのに… そう思っていた瞬間だった 「お父さんの事もいいけど、あんた恋人とかいないの?」 「えっ!?」 急な質問に、私は面食らってしまった 「いや、その…」 「それがですねおばさん!佳純ももうおひとり様を卒業したんですよ!」 躊躇う私の横から菜穂が口を開く 「え!そうなの?いい人出来たの!?」 「菜穂!」 「なんだと!?」 「あ、もしかしてあんまり言わない方が良かった…?」 尻込みながらそう尋ねてくる菜穂に、私は心底腹が立ってしまった なんで今言うのよ… いずれちゃんと紹介しようと思ってたのに… 菜穂の馬鹿!! 「…退院したら家に連れて来なさい」 低いトーンでお父さんが話す 「…うん」 「おじさん、心配しなくても大丈夫ですよ。相手は超エリート商社マンなんで」 「心配はしてないけど…」 ほんとにもうこれ以上余計な事言わないでほしい… 「菜穂、ちょっと飲み物買いに行こ」 「え?うん、わかった」 私は菜穂を誘って病室から出た
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