起点

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「今はあんまり彼の話はしないで」 「…ごめん。別に隠す事でもないと思って…」 「…お父さんに余計な心労かけたくないの…気を遣わせたくなかったのに」 「……ごめん、軽率だった。気をつけるね」 「だから鳥谷さんの話は…お父さんの前では控えて欲しい。ーー今は」 「わかった。もう言わないでおくね。ほんとにごめん」 「うん…せっかくだし何か飲み物買いに行こう」 「だね。おじさんとおばさんにも何か買っていこうか」 「うん」 「…あっ」 突然、菜穂が声を漏らした 「どしたの?」 「鳥谷さんから電話だ…」 え…?? 「そっか……連絡先交換したんだ…」 私の顔色から何かを感じ取ったのか、菜穂はすかさず返した 「普段は連絡とってないよ。何かあった時の為に一応交換しようってなっただけ!」 「今緊急なの…?」 醜い感情が覆い尽くす 「…わからないけど」 「出ないの?」 「外出たら掛け直すよ」 「…今出たらいいのに」 「いや、病院だし…」 「……」 「…………」 沈黙を殺すように、菜穂が言った 「…とりあえず売店行こ?」 そう言う菜穂を他所に、私は苛立ちが治らない 「仲直りしてから距離が縮まるの早過ぎない…?」 思わずそんな嫌なことが口から溢れ出す 「…佳純が疑うような事、絶対にしないよ」 わかってるよ。菜穂はしないよねーー だけど…翔介さんは違う 菜穂はそれを知らないからそんな事が言えるんだよ… 「ごめん…疑いたくなんてないのに」 「……例えもし、仮に鳥谷さんが佳純を裏切るようなことをしたら…私はあの人を許さないよ」 「菜穂…」 そうだった…菜穂が裏切ったらとか…そんなの私に言う権利は無い 私は既に何度も…菜穂を裏切ってるんだから… だけどそれでも…彼だけは…離れていって欲しく無い…
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