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ーーー
「……ーーと、いうわけなんです。ごめんなさい」
木目を基調としたお洒落なカフェで
目の前に座る鳥谷さんに、私は深々と頭を下げた
「仕事なら仕方ないよ、気にしないで。佳純…大丈夫だといいけど」
「そうですよね…でも暫くは凹んじゃうと思います。あの子責任感強いから」
「まあ仕方ないで済ますのは良くないけど、仕方ないよね。僕も良くやるよ」
「…私もミスばっかりですよ」
お互い少し自虐気味に笑った後、本題へ移った
「今日呼んだのはきちんと二人で話し合ってもらうためだったんですけど…出来なくなっちゃいましたね」
「だと思った。風見が二人で会おうって言うのはおかしすぎるもんな…」
どこか物憂げな目で見てくる彼に、私は少し胸を締め付けられた
「でも、風見がそんな気を回すって事は…もしかして佳純は僕を避けてるのかな」
うーん、鋭い…
「佳純は今、お父さんが大変で会う暇が出来ないと思うんです。鳥谷さんと連絡を取り合えば会いたくなるから、だから避けてるんじゃないですかね」
「なるほど…となると明日は無理か…」
「なんとかお兄さんに日取りを変えるようにお願い出来ないんですか?」
「…超がつくくらい融通が効かない人だからね…もしかしたら明日佳純の職場まで行ってしまうかも知れない」
「そんな事絶対駄目ですよ!!これ以上今佳純に心労かけないでください!」
「…ごめん。本当に昔から…僕は兄が苦手なんだよ。傲慢で、利己主義で…怖いくらいに頭が良くて、知らない内に周りを従えていくーー」
そうか…この人は自分のお兄さんに逆らえないんだ…
俯く彼の姿はとても小さく弱々しく見えた
「じゃあ…私が会います」
「……えっ!!」
「明日私が会ってきちんと理由を説明します。多分鳥谷さんが話すより聞き耳持ってくれるでしょ?」
「…確かに。そうかも知れない」
「もしふざけたこと言うようでしたら悪いけどガツンと言わせてもらいます!」
「…ガツンと…か。頼もしいな」
目線はこちらを見ているけど、どこか遠い目をして彼は言った
「ーー大人になったんだなと、改めて実感したよ」
「…何ですか急に」
「いや…僕は成長しないのに、風見は…強くなった。まるで違う時間軸にいるみたいだな」
「何言ってるんですか。大企業でバリバリ働いてる癖に」
「本質的な部分で、僕はまだ子供のままだ……何せ、自分の兄にすら強く言い返すことが出来ないんだからね」
「ーーそういう関係って意外と変えにくいんですよ。刷り込みみたいな所ありますしね」
「まあそうだね。洗脳されてるのかも」
自嘲気味に笑い、続けざまに彼は言った
「もし、今のまま過去に行けたなら
僕らは…どうなってたかな」
「………わかりませんね」
急に振られたので、かなりぶっきらぼうになってしまった
その問いに答える事は、今の私にはまだ出来ない
それを言えるようになるのは多分…もっと先の事だろうと思う
何年後、もしくは何十年後か…ーー
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