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店員さんにコーヒーを注文し、お兄さんは話を切り出す
「翔介。お前は病院に行ったのか?」
「…行っていない」
「何故?」
「まだ彼女のご両親への挨拶が済んでいないからだよ。そんな大変な時に挨拶するわけにもいかないだろうし…第一、娘の彼氏に入院している所を見られたい親なんていないだろ」
「俺なら寧ろそういう場面でこそ挨拶しようと考えるがな」
「…それは兄さんの考えだろ。僕は家族の中に介入していけるような図々しさは持ってない」
「言うようになったな。持ってないんじゃなく持てないだけだろう小心者が。人の顔色一つで自分の信念を簡単に曲げるような男がいっぱしの口を利くなよ」
強い口調に鳥谷さんは黙り込む
見かねた私は話に割って入った
「そんな言い方は無いんじゃないですか…?鳥谷さんは彼女にも彼女のご両親にも気を遣って距離を保ってるんだと思います」
「だがこういう時こそ頼るべき存在じゃないのか?彼氏というものは」
「家族の中には割って入れない時もありますよ!」
私もつい感情的な物言いになってしまっていた
なんていうかこの人は…他人の感情を度外視してる気がする…
鳥谷さんの言った通り
利己主義且つ、傲慢ーーー
ジロリと私を睨みつけながら、お兄さんはまた言い放つ
「ならば翔介は仮に結婚したとしても、一生その疎外感に苛まれるわけだ。寂しい事だ」
「結婚してからの話はまた別でしょう」
「そうかな?少なくともそれは家族側の意見だ。一度感じた疎外感は簡単に拭えるものじゃ無い」
「疎外感て…」
「所詮は他人だと、そう言われてるとしか思えないな。風見さんの言い方は」
「彼女はそんな子ではありません。色々考えている筈です」
「まあだが…病院に行かなくとも協力は出来る。買い出しに行かせるなり、自分の職場から病院、病院から自宅への送迎をさせるなり協力のしようは幾らでもあるんじゃないか?それすらもさせようとしないのは、やはり排他的な意思を感じるが」
「だからそれを気遣ってるって言うんじゃないんですか?彼氏だから彼女だからと何でも頼めるわけじゃないでしょう」
「そうか。その程度の仲だというわけだ…」
さっきからなんなのこの人…
私はムカつきを通り越して呆れてきていた
もうこれ以上話しても進展がないと踏んだ私は上着を手に持ち財布を開いた
「まあもう、お兄さんにどう思われようと構いませんが二人の恋の邪魔だけはしないであげてください」
「か、帰るの?」
「はい」
「まだ話は途中だが?急に話題変換しないでもらえるかな?」
「終わりました!私はきちんと友人の分の謝罪はしましたんで」
「失礼を承知で言うが風見さんは癇癪持ちかな?」
「失礼します!!」
私は千円札をテーブルに勢いよく叩きつけ店を出た
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