起点

13/20

215人が本棚に入れています
本棚に追加
/549ページ
ーーー 店を出て行く風見を見送りながら、僕は予想通りの展開に溜め息を吐きながら呟く 「相変わらずだね。本当に」 「なかなかに気の強い女だな」 悪びれる様子もなく、淡々と兄は言った 「…僕も帰るよ」 「待て、翔介」 「…言っておくけど、お見合いはしないから」 「ああ…お見合いはもうしなくていい」 「…え?」 予想外の一言に目を丸くしながら返した 「ああ。彼女なら、お前の伴侶にピッタリかも知れんな」 ………… ………………………… ………………………………………は? 「容姿もいいし頭の回転も速そうだ。あれなら鳥谷家に相応しい妻になれそうだぞ」 …こいつ、、、頭おかしいんじゃないか? 本気でそう思った 「…そんな事ありえるわけないだろ。ふざけないでくれよ」 「俺は本気だ」 「だとしたら余計にタチが悪い」 「あの胆力はなかなかに将来有望だ。お前のその優柔不断さを導いてくれるに違いない」 「耳ついてる?無理だって言ってるんだ」 「何故?」 根本的に相違した思考しか持ち合わせていない兄を睥睨しながら、何も言わずに上着を持ち席を立った 「…また逃げるつもりか?俺から逃げられると思うか?」 「逃げる?そんなつもりもない。今度ばかりは兄さんの言いなりにはならない……」 「心配するな。事の運びは全て任せておけばいい」 …… 立ち去ろうとしたが、振り返って一言だけ言葉を放つ 「風見や僕の彼女に余計な真似をしたら…あんたを絶対に許さない」 冷ややかな僕の視線を見て、不敵に笑みを浮かべながら兄が返す 「少しは良い眼をするようになったじゃないか」 その言葉を無視して僕は会計を済ませ店を出た 辺りに風見の姿はもうなかった ……兄さん いつまでもあんたの傀儡でいるつもりはない これからは自由に生きさせてもらう あんたのせいで育ちきったこの【歪】を 今度こそ自らの手で断ち切る為にーーー
/549ページ

最初のコメントを投稿しよう!

215人が本棚に入れています
本棚に追加