起点

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ーーー 「おはよう菜穂」 「あ…おはよう、佳純」 いつもの朝のロッカールームで、いつものように菜穂と挨拶を交わす 鏡で身嗜みを確認している私に菜穂が尋ねてきた 「昨日ビーフシチュー持ってったの?」 「行ったよ!なんだか変な顔しながら食べてたけど喜んでくれたみたい」 「そりゃ愛娘の手料理だもんを喜ばないわけがないよ」 「ただちょっと肉が硬すぎたんだよね…」 「煮込みが浅かったんじゃない?」 「うーん。レシピ通り作ったんだけどなぁ」 含み笑いをしながら着替える私に、続け様に菜穂が言う 「……鳥谷さんとは連絡とってる?」 急な話題転換に、私は言葉に詰まった 「え?…あんまり」 「…佳純の気持ちわかるけどさ…鳥谷さんとお父さんの事はまた別なんじゃないかな」 「……お父さんとの時間を大事にしたいって言ったけど」 そう私が切り出すと菜穂はジッとこっちを見つめていた 「本当は…翔介さんの事になると私ちょっと普通じゃなくなっちゃうから…だから距離を置いてるんだよねーー今までこんな気持ちになったことがなかったから…戸惑ってる」 「それは本当に彼の事好きなんだから仕方ないよ」 「だからこそもう少し頭の中を整理したいの」 「ーーそっか。わかった…見守ってって言われてたのに余計な口出ししてごめんね」 「ううん。もう少し時間が経ったら連絡してみるよ」 「了解」 この時私はふと思っていた 何故菜穂がいきなり翔介さんの話を切り出したのか それがわかるのはそう遠くない、その日の午後の事だった
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