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望み
わけがわからない…突然何を言い出してるのこの人…
私が菜穂の友達だと知りながら、何故?
もしかして、私から菜穂の情報を引き出そうとしてる?
だとしたら…舐められたものだ
私がどれだけ菜穂の事を想ってるか知らないんだ…
奪われた熱が別の形でまた戻ってきた
頭から湯気が出そうな私は暴れだしそうな自分を抑制しながら彼に尋ねた
「ストーカーって…一体何をしてるんですか…?最近菜穂がストーカー被害に遭ってるって話…あれもあなたですか!?」
「…そうなるね」
何が…そうなるね。よ!!
「わかりました。今から警察に行きましょう!警察に行って、全部話して下さい!!」
「……少しでいい。ワケを聞いてくれないかな」
「ワケなんて聞きたくな…い…え?」
彼は突然涙を流し始めた
「全て話を聞いてそれでも僕を許せなかったら…警察に突き出してくれて構わない…だから、せめて理由だけでも話させてほしい」
何であなたが泣くのよ…泣きたいのは菜穂と私よ…
「…ここじゃあれなので、少し場所を変えましょう」
ホームにいる人に見られている気がした私はそう言った
「…ごめん」
私と彼はそのまま電車に乗り、私の家付近の駅で降りた
車内ではお互い並んで立ったまま終始無言で、互いの顔すらも見なかった
不思議にも私は車内で、なんの思考も巡らせず流れる景色を見ていた
いや、巡らせられなかった。と言ったほうが正しいかもしれない
改札を抜けて遅くまでしているカフェに入る
時間は夜の9時を回っていたので、他の客は全然いなかった
満腹な私はコーヒーだけ頼み、彼もそれに合わせた
…ああ、ダメだな…
…こんな状況なのに
私は高校時代から夢にまで見たこの光景に
少なからず喜びを感じていた…
最低だな…私…
ダメだ、この人は…菜穂を傷つけてるんだから…もう好きでいるのもダメなんだ…
じゃないと私は菜穂の親友でいられなくなる…
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