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「まあ!なんて美しい花嫁さんなの!」
「なんと艶やかなんでしょう」
道行く人が皆、権蔵の嫁を見ながら溜息をついた。
朝から花嫁道具が届き、祝言の料理なども整い、花嫁が権蔵の待つ屋敷に到着した。
沢山の親族や客人が詰めかけ、幸せな時がゆっくりと過ぎてゆく。
振る舞われた酒の量も大したもので、その場に居た誰もが、酔いが回り始めていた。
ちょうど夕刻。
その音色が聴こえてきた。
江戸の街が、今までに見たことの無いほどの
真っ赤な夕日に照らされていた。
白くたなびく雲の陰に寄り添うように茜色が反射している。
地平線に近づけば近づくほど、まるで空が血を流しているかのように鮮やかな唐紅から朱殷のグラデーションに染まって、美しさを通り越して恐ろしささえ感じる光景だった。
チリリ、チリリリ・・・・。
チリリ、チリリリ・・・・。
遠くから、小さい鈴の音が、微かに聴こえてくる。
チリリ、チリリリ、チリリ、チリリリ・・。
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