絶滅危惧種

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絶滅危惧種

「なあA。明日はセミ採り行こうぜ~」 「おう! じゃあ8時に神社集合な」  一九六〇年代。日本は戦後復興を少しずつ進め、ようやく国全体が元の生活を取り戻し、さらなる発展を遂げようとしていた頃。 東京・大阪・名古屋など大都市以外の地域は、直接的な戦争被害こそ少なかったものの、その暮らしぶりは戦前とまだ大差なかった。  当時、小学四年生だったAは仲良しのBと一緒に毎日、地元の森や水辺で遊んでいた。 周りは田んぼと畑と少しの民家だけ。ぐるりとそびえる山に囲まれた典型的な盆地の田舎だった。 特にめぼしいものはない、ごく一般的な農村ではあるものの、子供二人にとっては十分すぎるほどに何でもある世界だった。 なにせ虫も魚も動物も植物もいっぱいいたのだ。もっぱらそれらを採集して遊んでいた。
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