絶滅危惧種

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 夏のある日、AとBは馴染みの川で鰻を採ろうとしていた。 今でこそ数が減り絶滅の心配が叫ばれるニホンウナギだが、水の綺麗な昔はそこら中の川にいた。 川幅は五メートルほど、深さは、最も深くて二人の腰辺り。川岸にはごろごろした石と砂利、それ以外は鬱蒼とした雑草の森だった。 前日の夕方、竹で自作した仕掛けをいくつかのポイントに沈めておいたのでそれを確認しに来たのだ。 鰻は夜行性。早朝に訪れ、いち早く成果を見に行きたかった二人は、日の出すぐに集合して1つずつ仕掛けを引き上げに行った。 「入ってる入ってる!」 「狙い通りだな」 狙い通り、順調に鰻を捕まえた。 水から仕掛けを回収し、次に向って二人で川をザブザブ歩く。 蝉も鳴いていない静かな夏の朝に水音だけ。 ちょっと不思議なことをしている感じがした。  次の仕掛けは大きな岩場の下、生き物にとって絶好の隠れ家で立派な鰻がよく取れる穴場だ。 心躍らせながら近づくと、岩陰に隠れ、二人よりも先に誰かが仕掛けを引きあげようとしている。 上り始めた朝日の逆光で、真っ暗な人影だけが確認出来る。 地元の人なら全員顔見知りだし、こんな卑怯なことをする人はいない。 となると、余所者か? そう思った二人は相手に気づかれないように、一度岸に上がり腰よりも高い草むらにしゃがんで、紛れた。 こっそり大回りで進んだ。少しずつ近づく。 岩の反対側まで来たが、相手には気づかれていない。
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