信じられ無い夜

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「けれど、一つだけ注意しなければならない事が有ります」「何?」 「太陽です、あの強い光と熱は、年中15度の気温、この部屋と同じくらいの 優しい光の中で暮らす、カディアの者には強すぎます」 なるほど、三匹がどことなく落ち着きが無いように見えるのは 暑さの所為か、ただでさえ暑い夏の、この狭い部屋に 毛と羽根で覆われた、でっかい三匹がぎゅうぎゅう詰め 驚きの連続で、すっかり忘れていたが、沙羅も、急に暑さを思い出した。 沙羅は、つと手を伸ばすと、テーブルの上に有ったリモコンを取り クーラーに向けると、ピッと、スィッチを押した。 三匹は、ぎょっとした顔で、一斉にクーラーの方を見る。 「あ、あれは?」ギリーが聞く「あれは、クーラーと言ってね 部屋の温度を下げる物よ、これは、それを操作する、リモコンって言うの」 そう言いながら、ピッピッと、25度に設定していた温度を、20度まで下げた これ以上は、沙羅にはきつい。 ブォー、たちまち冷たい風が、吹き出し口から部屋中に広がって行く。 「おお」「何と」「これは有り難い」三匹は驚き、喜んだ。 ホーリックは、すっかり落ち着いて、話の続きを始めた。 「お腹の中の王子様は、非常に繊細で光に弱く、少しの日光でも駄目なのです と言っても、何も難しい事では有りません、洋服を着ているだけで良いのです 直接、お腹に日光が当たると、王子様は死んでしまわれます」 死と言う言葉に、沙羅はビクッと身体を震わせた。 ホーリックは、心配そうな顔になり「仮親様、日光浴の習慣は?」と聞く 沙羅は、直ぐに平静になり「日光浴は、日光の少ない北国の習慣よ 私には無いわ、それどころか、この頃は、日光に当たるのは あまり体に良く無いと言われて、私も、日光を通さない服や 帽子を使っているの、だから、その点は大丈夫よ」 沙羅の言葉に、三匹の顔に、大きな安堵の色が浮かんだ。 王が言った「ならば、早速、仮親様の儀式を始めよう、時間もあまり無い」 「では、私は外で見張りを」ギリーはそう言って、外に出て行った。 カーテンを、しっかり閉めたホーリックは、ソファーを指差し 「仮親様、ここへ上を向いて寝て頂けますか」と言う。 沙羅は、言われた通り、仰向けに寝た。 儀式って、どんな事をされるのかしら、やはり、ドキドキする。 「では、始めます」ホーリックは、うやうやしく、沙羅に一礼し ソファーの前に膝まづくと、沙羅のパジャマの上下を 少しだけめくって、お腹を出し、沙羅の足元へ移動した。 代わりに、王が沙羅の前に膝まづき、腰のベルトに下げていた ポーチの様な物の中から、丸い袋を取り出し、その中から 鈍い虹色の大きな卵を取り出した。 王は、その卵に、沙羅の知らない言葉を、呪文のように唱えた。
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