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遼ちゃんとは、ぜんぜん違う〝何か〟でした。
こんな人が、いるんだ。
あたしは、完全に緒方さんのペースに、緒方さんの不思議なオーラに呑み込まれてしまっていた。
「お願いします……」と蚊の鳴くような小さな声で答えるのが精一杯だった。
緒方さんは、にっこりと笑って「はい」と答えてくれた。
緒方さんの、綺麗でやわらかな笑顔、まともに見てしまったあたしの胸が、トクンッと小さく跳ねた。その笑顔、ちょっと罪ですよ、緒方さん。
屈んでいた緒方さんは、すっと立ち上がって、改札口の上にある時刻と行き先がでている電光掲示板を見た。
「ひよりちゃん、次のまで5分あるよ。お家に電話しておいたら? 心配してるよ、きっと」
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