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再び
日を改め、再度【石井玲子さん】の魂を救うため晴海の運動場に向かう。
今回も間々井香取神社で我々二人の事、住吉神社では石井さんの事を心からお願い申し上げる。
黒い靄と波長が合う聡さんには今回も協力を依頼したが、あれの出現にどれだけ時間を要するか分からないので、焦れずに我慢して欲しいと伝えた。
難しい言葉は要らない。
心から願う事が最良に導く。
石井玲子さん、もしこの地に居られるのなら、どうぞ私にその姿をお見せください。
頭を垂れ手を合わせ、何度も何度もこの言葉を繰り返す。
隣で聡も目を瞑り手を合わせている。
何度も何度も語り掛け、現れるのを待ち続ける。どれだけ時間が掛かろうとも、二人は心を乱すことなく集中する。
ざわざわ…、ざわざわ…、微かな蠢きが聞こえて来る。
更に願いを込め語り続ける…、どうぞ私にその姿をお見せください。
ざわざわ…、ざわざわ…、ざわざわ…、ざわざわ…。音のする方に目を向けると、どす黒い靄が凄い勢いで蠢いている。
長谷川さんが今一度強く心に念じると、靄が少しづつ人のような姿に変化しているように見える。
それからは狂おしいばかりの悲しみが滲み出ている。
なんで…、悔しい…、私だけ…、苦しめ…、味わえ…、おまえも…。
ざわざわ…、ざわざわ…、こっちだ…、飛び込め…、死んでしまえ…。
聡は息が苦しくなるのを堪え〔あなたを救いたい!あなたを救いたい!〕と、その思いを繰り返し強く念じる。
すると長谷川さんが、静かにはっきりと「私がお話を伺います。どうぞお任せください」と頭を深々と下げる。
更にもう一度「お任せください。私がお答えします」と。
人のような形になった黒い靄が、二人の目の前で浮遊している。
ただ、そこに佇み長谷川さんの言葉を待っているかのように。
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