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終章
長谷川さんにとって慣れ親しんだ間々井香取神社。拝殿前に聡さんと共に並び無事に戻れた事の御礼を申し上げる。
右手にある神楽殿傍らに移り手を合わせ「石井玲子さん居られましたら、その姿を我々にお見せください」と、深々と頭を下げ願いを込める。
白い姿が朧気に現れ、我々に対して会釈をしてくださる。
長谷川さんが穏やかな声で「お越しいただきまして誠にありがとうございます。これから私が石井玲子さんをお見送り致します」とお伝えする。
難しい言葉は要らない。
心から願う事が最良に導く。
あの震災で辛く悲しい思いしたこと、私に全て委ねてください。
あの日某駅で多くの方を引き込んでしまい亡くなられた皆様方や、例祭で溺死された方の魂も私が心を込めてお救いさせていただきます。
どうぞご安心ください。
貴女様の贖罪を私に全てお任せください。
掠れるような声で「よろしくお願いします」と、頭を下げる玲子さん。
私の言葉を聞き入れていただきましたこと、深く深く感謝申し上げます。
長谷川さんが一礼し顔を上げると遠くの空から柔らかな陽光が差し「どうぞあの光に沿ってお上りください」と申し上げ、再び一礼する。
聡さんはその光景を見ながら、目から涙が零れていた。
良かった、本当に良かった、さようなら。心の中で申し上げる。
爽やかな風が頬を過り流れて行く。
長谷川さんから「無事お見送りする事ができました。聡さんお疲れさまでした。ご協力ありがとう」と。
「長谷川さんにお会いできたこのご縁に、心から感謝しております。こちらこそありがとうございました」とお礼を申し上げる。
それでは聡さん帰りましょう。
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