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「そんな俺を見かねたカミセンが、“放送室好きに使っていいから、せめて登校くらいしてこい!”って言って鍵を貸してくれて。
最初は寝る部屋が出来てラッキーくらいに思ってたんだけど、放送室に置いてある本やファイルを暇潰しに見てたら、段々興味湧いてきてさ。
それで、藤間と文乃を引き込んで、放送部を復活させたんだ。
あとから聞けば、
カミセンは俺がサッカーで挫折したことも、元々こういうキャラで喋るの嫌いじゃないってことも、どっかから聞いて全部知ってたらしいから、まんまとしてやられた感だけどな!」
先輩は、困ったように笑う。
私もそれにつられるように強張っていた表情を崩した。
卯木先輩は……
きっと、こんな時でさえ、私の事を気遣ってる。
しんみりし過ぎないようにって、わざと語尾を明るく言ってくれている気がしてならなかった。
「わ、私に……自分を重ねてたって、前に言ってましたよね……?
私といて……先輩、辛いこと思い出しちゃったり……」
「それはないからっ!」
重ねた手に、力が込められる。
「俺……響に感謝してるって、言ったろ?」
「……はい」
「確かに……響と初めて話したとき、似てるところがあるかもしれないって思った。
俺、サッカーに未練があるわけじゃないけど、
やっぱり怪我をしたときに一歩踏み出せなかった自分を……向き合わずに逃げた自分を、どうしても認められてなかったんだよな。
それに気づかせてくれたのは、響なんだよ。
だから響から悩み相談の手紙を貰ったとき、
放送で答えたあの言葉は、今思えば半分自分自身に向かって言ってたのかもしれない」
ごめんな、そう言って先輩はまた笑った。
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