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「んんー!このカラッとした夕方の空気、俺結構好きなんだよね」
店の外に出ると、卯木先輩は大きく伸びをした。
時刻は18時を回ったところで、梅雨明けして間もない7月の空はオレンジに染まり始めていた。
「今年は、空梅雨でしたね」
「そうなぁ。基本晴れ男の俺の影響だな!」
「……ふっ」
私は、思わず小さく吹き出し笑い。
多分……ナントカ高気圧の影響だと思います、先輩。
「なぁなぁ、笑うならちゃんと笑ってくれない?」
卯木先輩は不満そうに呟いて、それからおどけたように笑った。
屈託のない笑顔を向けられて、
胸がきゅうっと締め付けられる。
やっぱり…………私からは、聞けないよ。
先輩からその話を出さないってことは、
きっと聞かれたくないってこと。
唯でさえ辛く苦しい経験をしてるのに、これ以上私から蒸し返すようなことは……できない。
「駅向かおっか」
「あ……はい」
私は、先輩に促されてその隣に駆け寄った。
駅までの10分が、短くて長い。
もっと一緒に居たいのに、
頭の中がごちゃごちゃで、何を話したらいいのかすっかり分からなくなってしまった。
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