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「響っ待たせてホントごめん!
はぁ~、子供の体力凄いわ。俺身体鈍ってんなぁ」
小走りでこちらに戻ってきた卯木先輩は、二の腕で額の汗を拭う。
律儀に10分で切り上げようとした先輩だけど、男の子達に「もうちょっと!」とせがまれて、結局解放されたのは30分後だった。
動いたらあっちぃー……と言いながら、先輩は半袖シャツの袖と制服のズボンを捲り上げる。
思いの外筋肉質な肩やふくらはぎが露になって、私は思わず目を逸らしてしまった。
やだ……免疫無さすぎて、直視できないよ……
私は赤くなった顔を誤魔化すように、先輩にスポーツドリンクのペットボトルを差し出した。
喉渇いただろうなと思って、さっき近くの自販機で買っておいたもの。
「よ……良かったらどうぞ!
パンケーキのお礼にもならないですけど……」
「いーの?」
目を丸くした先輩は、すぐに「ありがと!」と笑ってそれを受け取ってくれた。
花壇の縁石に腰掛けて、さっきの男の子達を遠目に眺める先輩。
私はその横顔に向かって、思いきって声を掛けた。
「先輩……サッカーやってたんですね」
……これくらい、普通の会話だよね?
聞いても大丈夫だよね……?
「うん、中学までな。辞めて3年近く経つから、全然身体が動かなかったわ」
先輩は自嘲気味にハハッ!と笑って、ペットボトルの残りを一気に煽った。
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