向き合うことを恐れないで

10/17
前へ
/167ページ
次へ
「響っ待たせてホントごめん! はぁ~、子供の体力凄いわ。俺身体(なま)ってんなぁ」 小走りでこちらに戻ってきた卯木先輩は、二の腕で額の汗を拭う。 律儀に10分で切り上げようとした先輩だけど、男の子達に「もうちょっと!」とせがまれて、結局解放されたのは30分後だった。 動いたらあっちぃー……と言いながら、先輩は半袖シャツの袖と制服のズボンを捲り上げる。 思いの外筋肉質な肩やふくらはぎが露になって、私は思わず目を逸らしてしまった。 やだ……免疫無さすぎて、直視できないよ…… 私は赤くなった顔を誤魔化すように、先輩にスポーツドリンクのペットボトルを差し出した。 喉渇いただろうなと思って、さっき近くの自販機で買っておいたもの。 「よ……良かったらどうぞ! パンケーキのお礼にもならないですけど……」 「いーの?」 目を丸くした先輩は、すぐに「ありがと!」と笑ってそれを受け取ってくれた。 花壇の縁石に腰掛けて、さっきの男の子達を遠目に眺める先輩。 私はその横顔に向かって、思いきって声を掛けた。 「先輩……サッカーやってたんですね」 ……これくらい、普通の会話だよね? 聞いても大丈夫だよね……? 「うん、中学までな。辞めて3年近く経つから、全然身体が動かなかったわ」 先輩は自嘲気味にハハッ!と笑って、ペットボトルの残りを一気に煽った。
/167ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1918人が本棚に入れています
本棚に追加