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「なぁ、響……」
卯木先輩は前を見据えたままポツリと呟く。
「……はい」
「俺、響に感謝してんだよ」
「え……?」
言葉の意図が分からずに私が聞き返すと、
先輩はフ、と小さく息を吐き出した。
「話したいこと、あるんだ。聞いてくれる?」
「……は、はい……」
「じゃあ、とりあえず……これ捨ててくる。待ってて」
空のペットボトルを手に、先輩が「ほ、ほ、」と縁石の上を移動する。
その後ろ姿を何気なく目で追って、
……気づいてしまった。
右足首の後ろに、15センチ程の傷痕。
手術で縫合した痕のようなそこは、見るからに痛々しくて、
私は思わず「あ……っ」と声を上げてしまった。
「ん?」
ゴミ箱にペットボトルを捨てた先輩が、私の声に反応して振り返る。
その時、先輩は縁石の上から足を滑らせそうになって、
「おわっ、……と!」
跳ねるようにジャンプすると、体勢を崩しながら勢いよく地面に右足を着いた。
「イッテ」
「だ、大丈夫ですか!?怪我のとこ、ろ…………」
―――しまった。
そう思っても遅かった。
「え?」
卯木先輩は、大きな目をさらに見開いた。
「響……なんで、その事…………」
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