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「学校からは、推薦じゃなくて普通受験で入学してサッカー部に入る手もあるって言われたんだよ。
だけど、俺はそれを母親に相談もしないで断った。
N学は私立だし距離的に寮生活になるから、スポーツ推薦の学費免除がなく通うのは厳しいですって。
あとから先生にその事聞いた母親に、
“母さんのせいで断らせてごめん。あんたの行きたいとこ行かせてあげられなくてごめん”って泣かれちゃってさ。あれは、かなり堪えた……
それでその時、気づいたんだ。
なりふり構わずN学を選べなかったのは、金の問題なんかじゃなくて、単に俺が怖じ気づいただけだって」
先輩は、ふぅ……と細く長い息を吐き出した。
自分のことで親に泣かれる辛さは、私も痛いほど知ってる。
先輩の顔が見られなくて、私は俯きながら話の続きを待つことしかできなかった。
「他の新入部員にスタートから出遅れるっていう焦りと、足を庇って前みたいなプレーが出来ないんじゃないかっていう不安……それと周りからの期待に応えなきゃとかいう変な責任感まであって、
自分で自分にプレッシャーかけすぎたんだよな。
楽しくて仕方なかったサッカーも、ボールを見るだけで“無理だ、出来ない”って思うようになっちゃって。
俺って、こんなに打たれ弱かったんだって思い知らされた。
……ハハッ、すげー情けないだろ?幻滅されてもしょうがな……」
「そんなこと、ありません……っ!」
私は堪らなくなって、
気づいたら先輩の言葉を遮っていた。
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