第5章 魔法使いの館

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 七都とセレウスは、回廊に出た。  太陽の位置は高くなっていて、その光は中庭に降り注いでいる。  朝よりもさらに暑くなり、白い光をたっぷり含んだ空気は、呼吸するのさえ苦しいほどだ。  猫たちはのんびりと、それぞれ思い思いの位置に好みのポーズで散らばっている。  七都はフードを深く下ろし、セレウスのあとについて行った。  カトゥースのお茶を飲んだおかげで、体力は少し戻っていた。喉の渇きも空腹も、ある程度は癒されている。  セレウスが突然立ち止まったので、七都は彼の背中にぶつかりそうになった。 「この上に、彼がいますよ」  セレウスが、二階に続く階段を指し示した。 「え?」 「あなたのお知り合いの水の魔神族と渡り合ったという、例の魔神狩人です」 「ユードが?」 「本当に無視していいのですか?」  七都は階段を眺めたが、すぐに目をそらす。 「いいよ、もう。会いたくない。あの人は、水の魔神族の男の子の片腕を太陽にかざして奪ったし、その前に闇の魔神族の女の人をエヴァンレットの剣で殺したもの。大体、私も殺そうとしたし。遺跡の柱に縛り付けて、太陽で焼こうとしたんだから。絶対、許せない」 「それは、聞き捨てなりませんね」  セレウスは腰のあたりから、さりげなく剣を取り出した。 「彼を殺しますか? あなたがそうお望みなら……」  セレウスの若草色の目が、きらりと妖しく光る。 「や、やめてよっ。物騒なもの持って、物騒なことをさらっと言うのはっ」  七都はあわてて、剣を握りしめたセレウスの手を両手でつかんだ。  その途端、彼の体温が軽い衝撃となって伝わってくる。  あ、この人も体温高い。  熱いくらいにあたたかすぎる。ユードと同じだ。  この世界の人間って、こういう体温?  七都は、セレウスの手を離した。  セレウスは、七都が触れても、ティエラのようには固まらなかった。そのことに七都はほっとする。 「彼は、殺しません。殺しちゃだめ。怪我がよくなったら、この館から無事に出してあげてください」  七都は、ごく軽く命令するようなニュアンスを含めて、セレウスに言った。  魔神族はアヌヴィムよりも立場が上みたいだから、言うことは聞いてくれるはず……。 「わかりました。そうしましょう」  セレウスは、七都が思ったとおり、素直に剣をしまった。 「あ、でも……。ちょっとだけ隙間から覗いてもいい? 彼、眠ってるんだよね?」 「ええ。さっき様子を見に行ったときには、よく眠っていましたよ。では、どうぞ」
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