第6章 二人の魔神狩人

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「あの剣は、見事に私に反応していた。やはり、私がアヌヴィムだという証拠か……」  セレウスは、地下への通路を再び降りながら呟いた。  猫たちは、犬がいなくなったので再び姿を現し、地下の通路にも数匹ついてきている。  この館で『アヌヴィム』といえば、大抵はゼフィーアのことを指した。  セレウスも魔法は少し使えたが、ゼフィーアの足元にも及ばない。ゼフィーアも、弟をアヌヴィムとは認めていないような節もある。セレウス自身、アヌヴィムであるという自覚は、日頃から持っているわけではなかった。  だが、エヴァンレットの剣は反応した。おまえはアヌヴィムの魔法使いなのだ。そう告げるかのように。  その現実をあからさまに突きつけられたような気がした。 「ならば、行状を改めねばならぬか。アヌヴィムとしては、不真面目に暮らしてきた。あの方もここに来られたこの折……。そういえば、あの剣、魔神族のあの方には反応していなかった。あの方の言われた通り」  セレウスは、カトゥース畑の扉を開けた。  青白い静寂に満ちた空間が彼を包む。  セレウスは『あの方』、つまり七都を探す。 「ナナトさま?」  一瞬セレウスは不安になったが、七都がカトゥースの間で眠っているのを発見して、ほっと胸を撫で下ろした。  蝶たちが七都の髪に、宝石で作られた見事な細工の髪飾りのように止まっている。  セレウスは屈み込んで、眠っている七都をやさしい表情で見つめた。  やはり、自分が子供の頃に出会った魔神族によく似ている。その魔神族の娘だというのなら、当然のことかもしれないが。  遺跡の庭に突然現れた扉。その扉を開けて出てきた魔神族の女性は、この少女と同じように緑の髪と葡萄酒色の目をしていた。彼女は、唖然として立ち尽くすセレウスを見つけ、微笑みかけた。今でもはっきりと覚えている。  だが、目の前で眠っている少女は、あの女性とは違う。妖艶さも成熟した美しさも、まだ持ってはいない。  こうして横たわっていると、人間の少女と同じだ。とても魔神族には思えない。  なんとあどけなく、無防備に眠っていることか。子猫のように丸まって。 「私では、あなたのアヌヴィムにはなれませんか?」  セレウスは、呟いた。  それからセレウスは、しばし黙って七都を眺めたあと、立ち上がる。 「このまま少しの間ですが、眠っておいて下さいね。まだカトゥースも用意しなければなりませんし」  再びセレウスは、カトゥースの花を切り始める。
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