第6章 二人の魔神狩人

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 廊下を走ってユードの部屋の前で立ち止まったセレウスは、扉に耳を押し当てた。  遅れて到着した七都も、セレウスの隣で同じように耳をつけてみる。 「話し声がする。ユードと女の子の声だ」  七都は囁いた。 「おそらくユードの仲間でしょう。開けますよ」  セレウスは、勢いよく扉を開けた。  ベッドのユードが振り返る。  窓にしがみついていたカディナは、部屋に入ってきた二人を思わず交互に眺めた。 「これは、先ほどの魔神狩りのお嬢さん」  セレウスが、にこやかに言った。 「行儀がいいとはいえませんね」 「仕方ないでしょ。中に入れないんだから」  カディナは、セレウスを睨んだ。それから七都に視線を移し、眉をひそめる。 「その人、魔神……? こんな昼間の時間に?」  カディナは、エヴァンレットの剣を鞘から抜いた。  剣は相変わらず、青味がかった銀色に、ぼうっと光っている。 「本当だ。全然反応しない……」  カディナは、呆然と呟いた。 「カディナ! その剣をしまえ! 破壊されるぞ!」  ユードが叫ぶ。 「そんな、片っ端から粉々にはしないよ」  七都は、少しむっとして言った。 「今のところ、その子には、私をどうこうしようって気はないみたいだしね」 「大体、どうこう出来ないでしょう。それにエヴァンレットの剣は粉々にすべきですね。そういう力をお持ちなら」  セレウスが言う。  カディナは慌てた様子で、剣を鞘に収めた。 「カディナさんとやら。お仲間と話が出来てよかったですね。でも、そろそろお引き取りいただきましょうか」  セレウスは、あくまでにこやかに話しかけた。 「それとも、一緒にお茶でも飲みますか?」 「冗談でしょ」  カディナは、セレウスを睨み付けた。 「あ。私も彼女とお茶飲みたいな。彼女、かわいいし」  七都が言うと、カディナは、今度は七都を睨んだ。 「いいですね。新鮮なカトゥースで、花のお茶を作りましょう」  セレウスが、微笑む。 「人間も、あのお茶飲めるの?」 「飲めないことはないですよ。ただ、一般の人は決して飲みませんけど。飲むといえば、一部のアヌヴィムと、ごく一部の特殊な人間でしょうね。人間にとっても、そんなに味はまずくはないですよ」 「あんなまずいもの、魔神族しか好まん」  ユードが呟く。 「飲んだことあるんだ」 「飲んだことあるんですね」  七都とセレウスは同時に言って、顔を見合わせた。  ユードは、二人の反応を無視して横を向く。 「取り敢えず、きょうは帰る」  窓枠につかまっていたカディナが、体を少し伸ばして言った。 「そのほうがいい。とっとと行け」と、ユード。 「じゃあ、ユード、また……」  カディナが言いかけたとき、猫たちがユードのベッドから移動した。  床に下り、尻尾を立てて、カディナがいる窓に近づく。
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