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廊下を走ってユードの部屋の前で立ち止まったセレウスは、扉に耳を押し当てた。
遅れて到着した七都も、セレウスの隣で同じように耳をつけてみる。
「話し声がする。ユードと女の子の声だ」
七都は囁いた。
「おそらくユードの仲間でしょう。開けますよ」
セレウスは、勢いよく扉を開けた。
ベッドのユードが振り返る。
窓にしがみついていたカディナは、部屋に入ってきた二人を思わず交互に眺めた。
「これは、先ほどの魔神狩りのお嬢さん」
セレウスが、にこやかに言った。
「行儀がいいとはいえませんね」
「仕方ないでしょ。中に入れないんだから」
カディナは、セレウスを睨んだ。それから七都に視線を移し、眉をひそめる。
「その人、魔神……? こんな昼間の時間に?」
カディナは、エヴァンレットの剣を鞘から抜いた。
剣は相変わらず、青味がかった銀色に、ぼうっと光っている。
「本当だ。全然反応しない……」
カディナは、呆然と呟いた。
「カディナ! その剣をしまえ! 破壊されるぞ!」
ユードが叫ぶ。
「そんな、片っ端から粉々にはしないよ」
七都は、少しむっとして言った。
「今のところ、その子には、私をどうこうしようって気はないみたいだしね」
「大体、どうこう出来ないでしょう。それにエヴァンレットの剣は粉々にすべきですね。そういう力をお持ちなら」
セレウスが言う。
カディナは慌てた様子で、剣を鞘に収めた。
「カディナさんとやら。お仲間と話が出来てよかったですね。でも、そろそろお引き取りいただきましょうか」
セレウスは、あくまでにこやかに話しかけた。
「それとも、一緒にお茶でも飲みますか?」
「冗談でしょ」
カディナは、セレウスを睨み付けた。
「あ。私も彼女とお茶飲みたいな。彼女、かわいいし」
七都が言うと、カディナは、今度は七都を睨んだ。
「いいですね。新鮮なカトゥースで、花のお茶を作りましょう」
セレウスが、微笑む。
「人間も、あのお茶飲めるの?」
「飲めないことはないですよ。ただ、一般の人は決して飲みませんけど。飲むといえば、一部のアヌヴィムと、ごく一部の特殊な人間でしょうね。人間にとっても、そんなに味はまずくはないですよ」
「あんなまずいもの、魔神族しか好まん」
ユードが呟く。
「飲んだことあるんだ」
「飲んだことあるんですね」
七都とセレウスは同時に言って、顔を見合わせた。
ユードは、二人の反応を無視して横を向く。
「取り敢えず、きょうは帰る」
窓枠につかまっていたカディナが、体を少し伸ばして言った。
「そのほうがいい。とっとと行け」と、ユード。
「じゃあ、ユード、また……」
カディナが言いかけたとき、猫たちがユードのベッドから移動した。
床に下り、尻尾を立てて、カディナがいる窓に近づく。
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