プロローグ 木ノ図書館へようこそ

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プロローグ 木ノ図書館へようこそ

「コノハ!今ミツバチが『クマから巣を守る100の方法』借りて行ったわ」 「ああ、予想通りだ。今日ぐらいに来ると思っていたんだ。ところで、なんで咲良は怒っているんだい?」 「だってこの前クマさんに『もう痛くない!安全蜂の巣採集マニュアル』を貸していたでしょ?」 「うん、だからハチさんが本を借りに来たでしょ」 全く悪びれずに言うコノハに、咲良はため息をつく。 小さな古い森の一番奥に、11歳の咲良が10人ぐらい手を繋いでも周りきれない太い幹の樫の木が辺り一帯を木陰で暗くなるぐらいの葉を茂らせている。 その幹の勝手口のドアを開けると中は意外に広い。 時折、動物が訪れて本を借りていく。 そうここは『木ノ図書館』 コノハはこの小さな図書館の司書。 咲良はその助手として受付の役割を受け持っている。 もっとも、朝から晩まで受付に座っていても、訪れるのは一匹か二匹。殆どの時間をコノハが淹れてくれたハーブティーを啜ることに費やしている。 これは11歳の夏休みを木ノ図書館で過ごしたお話。 夏に降る雪みたいに一瞬で溶けてしまう、でも輝く美しい雫となって大地を潤す、そんなお話。
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