Over and Over

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「……ヒントがほしい」  ポツンと呟くと、それを聞いた高橋が声をあげて笑い出した。 「森川社長、ヒントくらいはいいんじゃないですか?」 「ダメよ。高橋さんは栞のファンだからって甘いわ」 「一刀両断ですか!」 「情報管理は徹底しないと」  麻沙美はことごとくすげない。何が何でも事情を栞に悟らせる訳にはいかないということか。栞が溜息をついた時、車が停まった。 「ありがとう、高橋さん」  麻沙美はそう言って、栞を連れ立って車から降りる。高橋は軽く手を上げ、再び車でどこかへ向かった。  それを見送る間もなく、栞は相変わらず麻沙美に手を引かれ、どこぞかへ連れて行かれる。いや、どこぞかへではない。栞の前には、豪奢なホテルが聳え立っていた。 「ここ……」  都内でも有数の豪華ホテル。伝統もあり、格式も高い。名前はよく知っているが、足を運んだことは一度もない。 「あの、パーティーか何かですか? だとしたら、私、こんな格好で……」  慌てて出てきたので、栞の服装はラフなものだった。ラフといっても仕事用だ、かろうじてジャケットは羽織っている。しかし、こんなホテルに来る格好ではない。
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