幸せのカタチ

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「小さい時からずっと見てきたけど、昔からモテてたし。でも、慎ちゃんって何気に不器用だから、浮気とかできないタイプなんだよね」  芽衣の目が見開く。 「そうなの?」 「昔だから、今はどうかわかんないけど、浮気なんて面倒だって言ってた。一人で手いっぱいだって。慎ちゃんって、基本は面倒くさがりなんだよね」 「浮気は面倒……なにそれ、名言!?」  信号が青に変わる。栞は笑いながら前を向き、アクセルを少しずつ踏み込む。車はたいした揺れも見せず、スムーズにスタートした。  芽衣は背もたれに思い切り寄りかかり、うーんと伸びをしながら本音を叫ぶ。 「栞ちゃんがノロケてる!!」 「あははは!」  芽衣は鞄から資料を取り出し、それを眺め始めた。今向かっているメイクイベントの資料だ。ミラーに映る芽衣の顔は、先ほどとは打って変わって真剣なものになっている。  自分の仕事が好きで、誇りと責任感を持ち、楽しみながら取り組む。そんな芽衣の力にこれからもなっていきたい。  自分はこんな風に芸能活動に取り組むことはできなかった。だからこそ、真剣に取り組む芽衣を応援したかった。そしてそれが、今の栞の仕事であり、懸命に向き合えることでもある。
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