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「……わかったわよ。ネタでも何でもして」
「わーい!」
芽衣はやったぁとはしゃぎ、栞はガクリと肩を落とす。これも仕事のためだ、仕方がない。
芽衣が話すことでまた記事になるかもしれないが、今日のイベントには高橋も来ているはずだ。彼ならきちんと書いてくれるだろう。もしかすると、芽衣の中ではそのことも折り込み済みなのかもしれない。
結婚式の日、ホテルまで送ってくれた高橋は、スーツに着替え立派なカメラを携えて、再び栞たちの前に現れた。そして、全員が解散するまでの幸せな時間を、そのカメラに収めてくれたのだ。
「栞ちゃん」
「まだ何かあるの?」
今度は何を要求されるのかと構えていると、芽衣が少し甘えた声を出した。
「今日、栞ちゃんちに泊まっていい?」
「……どうしたの?」
尋ねると、芽衣も同じことを考えていたのか、高橋の話を持ち出してくる。
「高橋さんが撮った結婚式の写真、また見たいなぁって思って」
「私もちょうど思い出してた。高橋さん、今日のイベントに来てるそうだし」
「うん、私もそれを思い出してさ」
栞は鏡ごしに芽衣に笑いかけた。
「いいわよ。でも、明日も仕事だから夜更かしはダメだからね!」
「りょーかーい!」
真崎と一緒に住むようになると、今のように簡単にお泊りとはいかなくなるだろう。それは少し寂しい気もするが、芽衣もきっと同じだ。
しかし、新居はまだかと聞いてくるところを見ると、それよりも栞の幸せを喜んでくれていることが伝わってくる。
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