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「何をするつもりなんだ?」
真崎に聞かれ、栞は首を横に振る。
「それは……内緒。でもまぁ、記事を書くのは高橋さんだから、おかしなことにはならないはず。そして『KIRISHIMA』にとっても悪いようにはならない……はず」
そう言った後、そっと上目遣いで窺うと、真崎がやれやれといった表情を浮かべていた。
「何となく、わかったような気がする」
「さすが慎ちゃん」
少し申し訳なさそうな顔する栞の頭を軽くポンと叩き、真崎が優しい笑みを向ける。
「第二弾のCMは、俺たちをネタにされたことだしな。こうなればもう、とことんだ」
「開き直った」
「仕事は開き直りが肝心だ。桐島さんと一緒に働いてると、特にそう思う」
「なるほど」
クスクス笑う栞の髪を柔く撫で、真崎は一瞬だけ耳元に唇を寄せた。
「焦がれる相手を振り向かせる」
「え!?」
真崎を見上げると、真崎の口角がクイと上がっている。
「お前を振り向かせて、その上、妻にもできた。あのキャッチコピーはあながち嘘じゃない」
「……っ」
「『KIRISHIMA』にいて、本当によかったと心から思う」
「……もう」
そんなことはとっくに感じている。それに、振り向かせたのは──。
「今週末、来るだろう?」
「……うん。新しい候補、ある?」
「必死で探すと次から次へと出てくるものだな。良さそうなのを見つけた」
「ほんと? 楽しみ!」
一緒に暮らすため、新居探しに必死になってくれている。
振り向かせたのはこちらだとばかり思っていたが、真崎の言うとおり、真崎も自分が栞を振り向かせたと本気で思っているのだろう。
栞は小さく笑い、真崎の手を取って指を絡めた。
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