追憶(Side:M)

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 携帯がメールの着信を知らせ、真崎は画面を確認する。仕事のメールも携帯に飛ばすようにしているのだ。相手と内容を確認し、表情を和らげる。 「いいと言ったのに」  栞からだった。今日の仕事の礼と、今後ともよろしくといった挨拶が書かれてあった。  彼女とこういったビジネスメールのやり取りをすることになろうとは、昨日までは思いもしなかった。  栞は幼馴染だ。実家が近所で、親同士が親密に付き合うようになり、彼女とも面識を持つようになった。  六年下の栞は、真崎によく懐いた。特別に何かした覚えは全くなかったが、栞が小学生の頃などはべったりだったような気がする。一人っ子の栞は、真崎を兄のように思っていたのだろう。懐かれて嫌な気はしない。真崎には弟がいることもあったので、もう一人面倒を見る兄弟が増えたという感じで、栞のことも気に掛けるようになった。  弟とは違い、栞は女の子ということもあったので、考え方の違いに最初は戸惑うばかりだった。  何を考えているのかはわかりやすいのだが、どうしてそうなったのかがよくわからない。  理屈よりも感覚で動く栞は、まるで宇宙人のようだと思った。しかし、それが面白くもあった。
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