追憶(Side:M)

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『慎ちゃん、栞ね、バレエがやりたいってママに言ったんだ』 『やるのか?』 『ダメだって! すぐ飽きちゃうでしょって』 『確かに……。お前、前もスイミングに行ってすぐにやめたもんな』 『楽しそうだと思ったんだもん! でも栞、泳ぐのあんまり好きじゃなかったんだよね』  なら、どうしてやろうと思ったのか。いくら楽しそうに見えたからといって、あまり好きじゃないとわかっているのに、それをやりたいと思う気持ちがわからない。  そして、今度はバレエ。その理由を聞いて、やっぱりよくわからないと思った。 『バレエはなんでやりたいんだ?』 『だって! あのヒラヒラのやつ、可愛いもん! お姫様みたいだもん!』  あの衣装は発表会などそういった場で着るものであって、普段の練習では着ないだろう。しかし、栞はそんなことは考えていない。衣装だけを見て、それが可愛いから、だからやりたい。そういった衝動が真崎にはよくわからなかった。  弟も似たようなことを言っていたが、一時期の話だ。割と早い段階で物事を理屈で考えるようになったし、効率を重視するようになった。  その辺りはやはり兄弟でよく似ている。ただ、弟の場合は自分もかつてはそうだったからか、栞の感覚だけで行動するというのも理解できるようだった。
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