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「それはー、貴方が大好きだからですよ!」
「ごめん、俺子供に言われて喜ぶ変態じゃないから」
「確かに喜んでいたら、気持ち悪かったかもしれませんね。セーフです」
「そうだな、セーフだな」
そういうと少年は鉛筆の動きを止め、子供と紙を何度も比べるように見る。そして、満足したように笑い、鉛筆を右耳の後ろへとさしこむ。
「出来た」
「本当ですか!?」
「本当だよ。ほら」
「わああ、僕です! 意地悪でブサイクに描かれるかと思ったのに、ちゃんと魅力的に描かれてますね! 見ていて惹きこまれます!」
板ごと子供の方へひっくり返して見せてみると、今まで見せた事の無いような輝かしい笑顔をして、机から降り、パタパタとこちらへ近寄ってきた。食い込むように絵を見る姿はどこから見てもただの子供にしか見えなかった。
そして、バッと顔を上げ、少年と目を合わせた。
「ありがとうございます! こんなに素晴らしい絵を描いてもらえて嬉しいです」
「そうか。喜んでもらってよかった。貰ってくか?」
「いいえ。貰って行きません」
こんなに喜んでいるのだから、もちろん欲しいと言うかと思ったが子供の返事は反対だった。今までのはもしかして演技だったのだろうか。少年を喜ばすだけの、嘘だったのではないか。
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