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「ありがとう」
「わっ、急にどうしたんですか。そんなに僕のサイン嬉しかったんですか?」
何かいけないものでも見たような反応をするので、一気に馬鹿らしくなって子供を小突く。「何するんですか!」とか大袈裟に体も使って伝えてくるところがまた子供だ。
「それより、そろそろ一時間ですよ。皆さん心配してるんじゃないですか?」
「言われなくても荷物は教室だから、戻るよ。じゃあな」
「ふふ、さようなら。また、どこかで」
「永遠に会えなくていい」
「連れませんねぇ」
どこかおかしそうに笑う子供を後目に扉を開けて、教室を出る。
自分で言った言葉だが、本当に永遠に会えない気がしていた。子供の言うことが本当なら、おそらく地球に来たこと自体が稀で、ましてや自分が会えたことなんて奇跡にも近いことなのだろう。
気になって、少し進んだ廊下を戻り、扉を開ける。もうそこはカチカチと時計の音が鳴り響くだけの空間と化していた。
丁度四時になった時のことだった。
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