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「今回は簡単でしたね」
子供はどことも言えない空間で漂っていた。それは宇宙が生まれる前の神秘的な場所とも思えるし、これから産み落とされる子供がいる胎動のようにも思える。
そんな場所で子供はここ数日の少年との日々を思い返す。
「彼はきっと寂しかったんですね。本当は絵が大好きなのに、その大好きを期待され過ぎて、分からなくなっていた」
さきほどの少年は今まで子供が相手してきた中では単純な部類だった。それでも、繊細な心を持っていて、自分が必死に守ってきた楽園を守ろうとしていた。守ろうとはしていたが、どこか救いを求めていたのだ。その救いを見いだせないまま、ずっとあの楽園にいたのだ。彼の周りの人も彼の楽園を壊さないようにしていたのだろう。誰も何もできないまま時間が過ぎていた。
そんな少年に呼ばれたのが自分だった。自分は少年を救うために、少年の三時に呼ばれていたのだ。
深夜三時も実はクローゼットの中にいた。少年がうなされているのを聞いている一時間だった。だから、午後三時に少年の寝顔を見た時に酷く安心するのと同時に、いつうなされるのかわからなくて、それが恐くてすぐに起こした。自己的だとはわかっていたが、そうしないと怖くてしょうがなかった。命の危険があるとかそういうわけではないのに、どうしようもなかった。
違う世界線だとしても、地球という惑星での同じ人間として放っておくことは出来なかった。
この束の間の休息もすぐに終わるだろう。次はどんな用件で呼ばれるのだろうか。あんまりにも大きすぎることはやめてほしいものだけど。
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