六時限の空き教室

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「…………」 「まあ、大方見当は付きますけど。でも、なぜここなんです? 事情は皆さん知っているのでしょう? それなら、保健室でも全然大丈夫じゃないですか」 「……。あそこは臭いが無理だ」 「まあ、保健室って薬品やその他もろもろ色々な臭いが混ざっていますからね。それに、風邪とかがうつってしまう可能性もありますし」  なんでもお見通しのような子供の言いぐさが今は楽だ。全てを自分で口にしなくてもいいということがこんなにも気持ちを楽にさせる。いや、本当の意味で理解してくれていると実感しているからだろうか。他の人たちも知ってはくれている。でも、それが少年の本当を理解してくれているとイコールにはならないのだ。 「いつからです?」 「中学三年くらいじゃね? 詳しくは覚えていない」 「そうですか。では、理由はストレスですかね」 「…………。…………………。そのころ、大きな大会があって。それで、期待されていたら、それが、もう、重くて」  勝手に口が話を進める。本当はこんな子供に聞かせる気なんて全くないのに。  子供に聞かせるような内容じゃないのに。  それでも。
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