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「…………は?」
「貴方、絵を描けるんですよね? 僕、貴方の描く絵を見てみたいです。これで下手だったら思い切り笑ってやりますけどね」
さきほどまでの何を考えているのかわからない表情から一変、子供は悪戯をするようにでも笑っている。絵が下手だと判断する前に、すでに馬鹿にされているような気もするが、それが逆に少年を楽にさせた。
説教でも乞うていたのだろうか。急激に自分がバカらしくなって思わず笑ってしまう。
少年はゆっくりと立ち上がり、棚の扉をガラガラと横にスライドし、そこから年季の入った鉛筆と紙を取り出した。どう見ても、絵を描くために用意されたものではないが、同じくその棚にあった板を下敷き代わりにして、鉛筆を走らせた。
シャッ、シャッとその音が教室に響く。
「なあ、お前の正体何なの?」
「ん、急にどうしたんです?」
「いや、気になって。俺はただの人間だし。でも、お前、人間の形した宇宙人とかかなって思って」
「ふふ、僕はなんてことない貴方と同じ人間ですよ」
「そうかよ」
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